2026年最初の連休、関東では大規模なイベントが二つ開催された。
一つが「東京eスポーツフェスタ2026」。
もう一つが「東京オートサロン2026」だ。
(各イベントの詳細については、公式ウェブサイトをご覧いただきたい)
前者は言わずもがなeスポーツを主軸としたイベントだが、実は後者の東京オートサロンも、近年eスポーツに力を入れている。2024年から「eスポーツエクスペリエンス」と銘打ち、ゲームとモータースポーツを融合させた取り組みを本格的に始めているのだ。
過去には『ストリートファイター』のステージイベントが行われたこともあったが、2026年は『グランツーリスモ』をメインタイトルに据えた企画が展開された。会場は、東京ゲームショウでもおなじみの幕張メッセ。その国際会議場2階で、さまざまな体験型イベントが実施されていた。
筆者は本業の関係で東京オートサロンに出席しており、スケジュールの合間を縫って国際会議場2階を訪れた。そこで目にした光景から、eスポーツの発展に関わる一つのヒントを得たように思う。
最初に目に飛び込んできたのは、ずらりと並んだドライビングシミュレーターだった。タイムアタックイベント自体はすでに終了していたものの、来場者向けに通常のシミュレーター体験が提供されている。

子どもから大人まで、多くの人が専用シートに腰掛け、コントローラーを握りしめてレースを楽しんでいた。その様子はどこか穏やかでありながら、同時に強い熱量も感じさせるものだった。もし本格的なレースイベントやタイムアタックを、この環境のまま実施できれば、相当な盛り上がりを見せるだろう。

私は以前から、グランツーリスモというゲーム――あるいはドライビングシミュレーションは、eスポーツとの親和性がきわめて高いジャンルだと感じている。
その理由はシンプルだ。実車のレースも、グランツーリスモも、主役は「人」ではなく「車」と「戦略」だからである。実際のモータースポーツ中継を見ても、カメラは常に車を中心に捉え、レース展開や駆け引きが映し出される。
これを他のプロスポーツと比べてみると違いは明確だ。多くの競技では、テレビ中継で選手の表情や肉体がクローズアップされる。私たち視聴者は、自分たちの身体能力と重ね合わせ、そのスーパープレイに驚嘆する。しかしeスポーツでは、その凄さがバーチャル空間の出来事として受け取られ、どうしても現実感を持ちにくい場面がある。
一方、グランツーリスモはきわめてリアルなシミュレーターだ。ドライバーがエアコンの効いた部屋にいることを除けば、やっていることは実際のレースとほとんど変わらない。ブレーキングポイント、ライン取り、タイヤマネジメント、燃料戦略。勝敗を分ける要素は、現実のモータースポーツと完全に地続きだ。そして車は、日本で生活している以上必ず目にするものである。
さらに、グランツーリスモのレース映像は非常に「見やすい」。視点は安定しており、車同士の距離感やバトルの構図が把握しやすい。実車レースではカメラワークや中継の制約がどうしても付きまとうが、バーチャルであるがゆえに、観戦体験はむしろ洗練されている。場合によっては、実際のレース以上に競技へ没入できる可能性すらある。
国際会議場でシミュレーターに向かう来場者の姿を見ていて、もう一つ印象的だったのは、その参加層の広さだ。モータースポーツに詳しい人も、そうでない人も、年齢や知識に関係なく同じ体験を共有している。これはeスポーツが長年抱えてきた「入口の狭さ」とは対照的な光景だった。
東京オートサロンは本来、車好きのためのイベントだ。しかしそこにeスポーツを持ち込み、しかもグランツーリスモという“現実と地続きの競技”を据えることで、無理なくゲーム体験が受け入れられている。「eスポーツだから面白い」のではなく、「面白いものとして自然に成立している」点が重要なのだ。
東京eスポーツフェスタが、ゲームファンのための祝祭だとすれば、東京オートサロンのeスポーツエクスペリエンスは、eスポーツを知らない層に触れてもらうための場として機能しているように感じた。どちらが正しいという話ではない。ただ、eスポーツがさらに広がっていくためには、後者のような文脈も欠かせないだろう。
今回、スケジュールの合間に立ち寄った国際会議場2階で得た気づきは、eスポーツの未来が必ずしもゲーム業界の中だけで完結しない、ということだった。既存の文化や趣味と交差したとき、eスポーツはより多くの人にとって「自分ごと」になる。
東京オートサロン2026は、その可能性を静かに、しかし確かに示していたように思う。